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■■それはきっと、ずっと未来の

最近全く文章を書いていなかったなあと思い、若干古い未公開品を引っ張ってきました。
続きより閲覧どうぞ。
思えば最近、イラスト技術の向上にばかりがむしゃらになっていて、物語の空気とか、痛いほどに優しくて切ない世界とか、大好きで、大切にしたいと思っていたものをすっかりと忘れてしまっていたように思います。
語部の話についても、かなり古くなってきてしまっているので、今後正式に再考したいなと。
一個のことを始めると、他のことが全く目に入らなくなってしまう気質なので、気を付けないと毎回大事なことを忘れてしまう。
今回この文章を修正していて色々なことを思い出したので、今度はそれを忘れないようにしたいです。
「ヒズミ、いいことを考えました」
白銀に輝く長髪を揺らし、20代の半ばほどに見える青年が振り返った。
視線の先に捉えるのは、青年よりもいくつか年上に見える黒髪を短く整えた男。

「随分嬉しそうだな。一体何を思いついたんだ?」
答える男に、青年は目を細めて笑む。
「……名前。澄んだ火、で、火澄(ヒズミ)。どうですか?」

青年の提案に、男は一度瞬きをして、そして小さく微笑んだ。
その笑みが、彼が嬉しいときに浮かべるものなのだと、青年は知っている。

「この名は、俺の名で……だからこれは、俺なんだ。父母に頂き、家族に呼ばれ、そして……お前が、継いでくれた」
左右で色の違う目を少しばかり細めると、今はもう自身と大差ない程に成長した青年の頭を、そっと撫でる。
「だから、これは俺の名で……そして、俺の名は……歪でしか、有り得ない」
目の前に立つ兄の、その穏やかな顔に、青年はどこか眩しげに目を細めた。

「……そうですね。なら……歪」

自身の名を呼ばれ改めて青年を注視した男の額に、青年の手が触れる。
以前ほどには顔色の悪くないその肌を、確かめるように撫でた。
「……お帰りなさい。歪。私たちは、あなたを忘れませんでした」
「………聖」

「語部は……あなたの名を、忘れませんでしたよ」

「…………ありがとう……」
ゆっくりと紡がれた言葉と共に、男は、影などどこにもない、ただ幸福そうな笑みを浮かべた。
それは、彼が語部として生きていた頃には、けして見ることの出来なかったもの。
「変わりましたね。いや……戻ったと……変わっていないと言えば良いのか」
青年は、フ、と笑った。
「あなたは本当に……昔からずっと、分かっていない」
目を細め、苦笑するように紡がれた台詞に、男は緩く首をかしげた。
その、知っていたころよりも柔らかい仕草に笑みながら、青年は言葉を続ける。

「分かっていない。本当に。お礼を言うのは、私の方……なんですよ?」
愛おしげに、慈しむように、青年は微笑んだ。
だって、あなたがいなければ。

「ありがとう、兄さん。あなたが守ってくれたから……私は今……ここに、いる」
あなたが自身を捨ててまで、守ってくれたから。


「……ありがとう」
そう。私はずっと……ずっと、ただこの言葉が言いたかった。

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