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そんな感じで学園生活

※ゆっきーとのチャットにて派生した語部の学園パラレル物です。
ゆっきー! チャット激しく楽しかったです。有り難う御座いました!
※激しく、山なし、落ちなし、意味なしです。それでも良ければどうぞ;


 化学教員である榊のサングラスの下はどうなっているのか。
 それは、学校の七不思議ならぬ、学校の七大謎の一つだった。

■■そんな感じで学園生活

「榊先生ー!」
 背後から聞こえた少女の声に、榊は首をめぐらせた。
 声を発した少女は、二年生の……確か歪のクラスの生徒。
 足を留めてこちらを見る榊に、六人程の生徒がパタパタと走り寄ってきた。
 どうやら全員自分に用があるらしい。そう判断した榊は、視線の方向に体ごと向きなおした。
「皆集まって……どうした?」
「せんせー! ちょっとかがんでくれって」
 濃いサングラスで目元が見えないので正しくは分からないが、怪訝な顔をしたらしい榊。しかしそれでも男子生徒の言うとおり少しかがんでやる。
 この辺りが、彼が生徒に信頼される要因なのだろう。
 と。途端に、先程榊を呼んだ女子生徒の手が彼の顔に伸びていき。
 彼の顔、その目元を完全に隠すサングラスがその手によって取り払われた。
「成功!」
「よっしゃ、先生の素顔拝見ー」
 生徒達の明るい笑い声が聞こえる。が、それに返答を返す余裕は榊には無い。
 一気に増えた光量に、眼球が鋭く痛んだのだ。榊の目は光に弱い。
 殆ど反射で手の平を使い目元を隠す。
「せんせーってばそんなに顔見せんのイヤなのかよー」
 男子生徒がからかうようにカラカラと笑う。

 困った。ここで倒れては、生徒達が罪悪感を感じてしまうかもしれない。それでも止まない頭に響くようなズキズキとした痛みに、生徒達に良く無いだろうとは分かりつつ屈みこんでしまう。
「せ、先生!?」
 最初は、顔を見せるのが嫌で顔を覆ったのだろうと思っていた生徒達も、榊の異変に気付いたようで。しかしどうすれば良いかも分からずおろおろと榊を見やる。
 周囲の者も異変に気付いたようだが、やはりどうするべきか分からずただ成り行きを見守る事になってしまう。
「……どうした?」
 気まずい空気で静まり返った廊下に響いたのは、歴史の教員である歪の声。
「ひ、歪先生!! あの、悪戯で……榊先生のサングラスとったら……先生がっ」
 生徒の声と場の様子で状況を理解した歪は、一瞬目を見張ると急いで榊の元に寄って来る。
 語部歪と語部榊は、名の示す通り親戚である。
 遠い血縁らしい彼らは、けれど歳が近いからか仲が良かった。
 悪戯の発案者だった少女は、榊を知る先生の出現に我知らず息をついた。

「榊、痛むか?」
 移動しながらスーツの上着を脱いだ歪は、それをそっと榊の頭に被せた。
 取り合えず遮光が必要だろう。
 榊の掛けているサングラスは特殊なもので、一般的なそれよりも遮光性が一段と高い。
 だが、それを掛け直すにしても、現在彼の目を覆っているのは彼の手の平なのだ。掛けかえる時に光を入れない為には、顔ごと遮光するように何かを被らなくてはならない。
 自らも屈み込んで榊の額に手の平を当てた歪は、熱が無い事を確認し背後を振り返る。
「せ、先生……榊先生は?」
「大丈夫だ。問題無い。榊の眼鏡は?」
 その言葉に、今にも泣きそうな顔をした少女が両手を差し出す。
 手の平に乗ったそれを受け取った歪は、そのまま榊に差し出す。
「榊、取り合えず保健室に行け。今ならば、ははう……宴(ウタゲ)先生がいるだろう」
 サングラスを掛けなおしているらしい榊に言う。
「……いや、そんな大事じゃ無い。大丈夫だ」
 立ち上がり上着を歪に返す。
 こんな時でも律儀に『有り難う』と言いながら差し出す辺りが榊らしい。
 大事では無いと言うその台詞も、生徒達を気遣ってのものだろう。彼の目は、日当たりの良い廊下に裸眼でいられる程強くない。
 歪は小さくため息をつく。
「大事になっては困るから言っているのだろう。……目から血が出ているぞ」
 呆れたような声に、榊は先程まで目を抑えていた手を見やる。
 確かに、手の平には少しばかり血が付いていた。

「わ、わざとじゃ……無かったんです……こんな事になるなんてっ、思わなくて」
 いつものように微笑む榊に、しかしその頬に流れる血に、安心と不安が内混ぜになってしまったのだろう。搾り出すように言葉を紡ぐ少女の頬は涙で塗れていた。
 他の生徒も、罰が悪そうに俯いている。
 取り合えずその血を拭えと榊にハンカチを手渡した歪は、もう一度小さくため息をついた。
「榊の病は症例が極めて少ない難病だからな。知らなければ分からないだろう」
 生徒達は既に自主的に反省しているようだ。
 これ以上責めては教育的に良くないだろうと歪は判断する。
 と、言うか。
 そもそも、他人のサングラスを少し外す位の事がこんな大惨事になるとは思わないだろう。
 そう言う意味では、彼らは等しく被害者と言っても良い。
 勿論、榊が加害者と言う訳ではけしてないが。
「私こそすまなかった。こんな事になるとは思わなくてな。ちゃんと事情を説明しておくべきだった」
 渡されたハンカチで顔を拭いた榊は、やはりその辺りに思い当たったのか困ったように苦笑する。
「先生ー、ごめんなさいーっ」
 声が重なる。歪と榊のフォローは、むしろ生徒達の罪悪感を募らせてしまったらしい。
「いや、だから……気にしなくていいよと」
 女生徒達に泣き付かれて、榊は困ったようにホールドアップした。
 それは、お手上げと言うよりは。どうして良いのか分からず、手が中空に留まっているといった所だろう。
 そんな光景を微笑ましく思いながら、歪は腕に付けた時計を見やる。頃合だ。
「ほら、ここで泣いていても仕方がないだろう。榊先生に付き添って保健室まで行って来ると良い。次の授業は私の受け持ちだから、少しくらいの遅刻は許容しよう」
 微笑みながらそう言えば、生徒達は真面目な顔で頷いて、榊の袖を引っ張っていく。
 榊は最後まで困ったような顔だった。
 見送った歪は、今度は周囲を見渡す。
 集まっていた生徒は、大半が未だぼうと突っ立っていた。
 歪は苦笑しながら、何度か手を叩く。その音に、周囲の生徒がびくりと反応する。
「お前達も。もう次の授業まで間が無いぞ。遅刻したくなければ急いで教室に向かいなさい」
 ほうけていた生徒達は、歪のその言葉に各自の手段で時間を確認し、そして焦ったように散っていく。

 この日以降、榊はサングラスのガラスの色を、今までよりずっと薄いものに変えた。
 こうしておけば、素顔が気になると言われる事も無いだろうとの思いからである。
 変えてから気付いた事だが、濃い色のサングラスでは他人からは表情が伺い辛かったのかもしれない。
 そこに思い当たり、変えて良かったと思う反面、自分の表情が他人に与える影響が大きくなった為、少し大変だなぁとも思っている榊である。

 余談だが。それまで隠れていた、いかにも榊らしい困ったような笑みが素敵だと、女生徒にはわりと人気……らしい。

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