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語部な日常制作中イラストや日記用イラスト、雑記雑感などを中心に展開中。まれに版権話や小説が出ることも。PAGE | 422 421 420 419 418 417 416 415 414 413 412 | ADMIN | WRITE 2008.12.05 Fri 17:51:55 創世記誰も知らない、創世記。
ソレは、たった一人きりでした。 何もない世界。踏みしめる大地も、見上げる天もない……世界。 そこに佇む、かつて『管理者』と呼ばれたソレは、たった一つの無ではない存在にして、この何もない世界の王でした。 完全な存在である彼(あるいは彼女)は、それゆえに望むものもなく。 全ての事象は彼(あるいは彼女)の元で完結し、彼の思考は、全て彼の中で完結する。 完全ゆえに求めるものもなく、掛けた所がないゆえに全ての事象はそこで完結する。 けれど、掛けた所のないそれは。まるで……無であることと変わらないようで。 全てを持っているがゆえに、そこには何も存在しなかったのです。 だから。 あるとき彼(あるいは彼女)は、自らの存在を二つに分けました。 生まれた無垢なる存在は、彼とは対極にあるもの。 けして完全ではなくなった彼は、ゆえに彼女を愛しく想う心を手に入れました。 彼は、彼女が休めるようにと世界を大地と天に分け、 彼女が暗闇に怯えないように、天を星で彩りました。 彼女が寒くないように、世界に色をつけ、 彼女が寂しくないように、沢山の生き物を創りました。 そして、彼女が自分の存在をなくさないように、自らを『天の王』と呼び、彼女に『地の王』と名付けました。 そうして世界に箱庭を作った彼は、けれど自らが地に降り立つことはけしてありません。 彼には、『無に返る前の世界』で背負った咎があったのです。 完全であったときには、罪であると思うこともなかった、咎。 そして彼は、自らの過ちに気付きます。 完全でなくなった彼は、『彼ら』と同じ存在になっていたのです。 『彼ら』は、欲するものの多さゆえに身を滅ぼしました。 彼(あるいは彼女)は、世界の正しい姿は無であると、思っていた筈でした。 彼女を愛した彼は、自らの心を恐れました。 彼女を想う心が、いつか『彼ら』と同じ過ちを犯すのではないかと。 悩み続けた彼は、ついに一つを決めました。 彼女に、自らの力のうち、半分と少しを差し出したのです。 できることが狭まるようにと。 そして。 彼がどうしようもなく外れてしまった時には、彼より強いその力で。 自らを殺してくれるようにと。 それから、数千年も数万年も後のこと。 地の王は、その力で、自らに近い存在……ヒトを創り出しました。 それは、『彼ら』と同一の、存在。 世界は繁栄し。 そして、過ちの運命は……加速を、始める。 PR TrackbacksTRACKBACK URL : CommentsComment Form |