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■■ 雨

発見品2号。…………こんなんいつ書いたんだ私……。
珍しく文章。
琉綺宅に触発されて、小説形態でキャラの心情独白を書いてみようかなぁと。



ぽつり、ぽつり。

ぽつ、ぽつ、ぽつ、ぽつ、ぽつぽつぽつ。

ぽつぽつぽつ、ぽたり。

ぽたり、ぽたり、ぽたぽたぽたぽたぽたぽたぽた。


――雨が降ってきた。

その、静かな、けれど不思議と響く音につられ窓の外を見た狂は、静かに筆を下ろした。
空いた手で、眉間をそっと押さえる。
状況から鑑みて、今手を休めるのは得策とは言い難いが、今日はもう駄目だろう。

――雨の日は、仕事にならない。

そう思考し、直後、自嘲げに笑う。窓辺に寄り、空を見上げた。
天候に左右される漁師ではないのだ。雨が降ろうと仕事ができない訳ではない。
ただ……雨が降ると、思考が鈍る。
今もそうだ。考えなくてはならないのは、遅れた予定の再構成。
しかし、それをしながらも、頭はぼんやりと意味のない思考を続ける。

ぽつ、ぽつ、ぽつ、ぽつ、ぽつ、ぽつぽつ。

一定のリズムで、けれど時折変化を織り交ぜながら、雨が音を奏でる。
窓枠に腰かけ、それに耳をすませた狂は、もう一度笑った。けれどそれは、どこか不自然な、もの。
そう、それは、常に笑顔を絶やすことがない彼からは、想像しにくい表情。
けれどそれも、確実に彼の姿の一つだった。

ただ、それを知るものが少ないと言うだけのこと。
そして、彼自身も、そんな自身を忘れていることがある。
思い出すのは必ず、雨の降る日。

狂は雨が嫌いだった。
理由は至極単純。雨の降る日に悪い思い出が多いから、と、それだけだった。

ぽたぽたぽたぽたぽたぽた。

とめどなく流れる音は、まるで呪詛のようだ。忘れるな、と、思考を苛む。
呪われたのは、自分。けれど、呪いの主も……自分自身。
忘れるな、そう苛むのは、自分自身。
そして同時に、何故救えなかった、と、悔恨し、罵り、嘆く。

「本当に、馬鹿な男ですね」

彼の友人の言葉を思い出す。彼に対してそう言うのもおかしいが、息災にしているだろうか。

「本当に、な」


実際語部にも、狂は雨が好きなのだ、と認識しているものが少なからずいた。


雨の日には、彼は必ず窓際に寄り、ただ静かに雨を眺める。
だからこそ、彼は雨が好きなのだ、と。


「ただ、眺めるだけだ。動くことも……止まることもままならねぇ。オレは本当に、大馬鹿ものさ」



自嘲気味に呟かれた言葉は、誰の元に届くこともなくただ……ほどけて消えた。


END. 2010 10 15(2010 08 20手直し)

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