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■■黒、そして白

↓発見品第4弾。こんな話書いてたっけ…………。作りかけっぽく途中で途切れてます;
【近況】テスト終わりー。課題も差し迫ったものは終わりー。もはや、希望と絶望の境をさまようカウントダウン時期に入りました。

語部の衣装について説明するに当たって、創作語りをするだけでは面白くないなぁという所で、狂にしゃべって貰いました。
説明する相手は……語部関係者ではやり辛かったので、某橙色の王様に依頼。

*       *       *

それはきっと、無言の重圧。ただ「  」であれという。
では、それならば……「  」とは、何だというのだろうか。
ああ、それすら分かりはしないのに!
一体。何をもって、何のために「  」はいる。

■■黒、そして白



「元は、黒は当主の色だったのさ」
いつの間にやら、それが名を持たない一族の代名詞になってしまったから、今では全ての語部が黒を好んでまとうが、な……と、語部きっての純血は、いつもの笑みを浮かべて説明する。

何故だろう。
橙の王は、首をかしげた。見つめる横顔が、今日はどこか違って見えた。

「どうしたんだい? てめぇで頼んだ説明の、その最中にぼけっとしてったぁ、律義なあんたにしちゃあ珍しいじゃねぇか」
――ああ、そうだ。。
男と目があって初めて気付いた事実に、けれど、橙の王はそっと目を瞑った。

服装の、色。
以前から少し気になっていたそれを、何の気なしに問うてみただけだったのだ。
けれどそれは……目の前の男にとっては、ただ色について語るだけでは済まないものだったのかも、しれない。

「いや。悪い、ちょっと別のことを考えてた……というか。それ、褒めてるのか?」
だから王は、その先を求めることは、しなかった。
話を続けるか、それとも話題を転換するか、判断を男にゆだねたのだ。

「ク、褒めてるさ。だが……気を付けな。律義すぎると、貧乏くじ引いちまうぜ?」
男の言葉に、王は目を細める。その言葉に込められた意味は。
男が笑う。悪戯が成功したとでもいうように、楽しげに、けれど寂しげに、そしてどこか、嬉しげに。
そうしてしばらく、どこか遠くに向けるように笑っていた男は、気がすんだのか笑いを納める。
「ああ、それで。黒い服装の所以、だったな」

王が抱く、この男の印象は出会った当初から一貫していた。ただ一言。よく分からない男だ、と。
ただ、その言葉に内包された意味は、当初から少し、変わっていた。

「語部の当主と副当主は、正装、略装、その他諸々ある全ての服装において、黒を基調とすることが決まっている。さあ、ユフィ……黒は、何の色だと思うかい?」
突然の質問に、その内容に一つ目を瞬いた王に、男は笑みを浮かべた。
「あんたは今日、訪ねてきたオレの風貌を見て……どう思った?」

――まるで、喪服のようだ。

彼が訪ねてきた当初から、王は確かに、そう考えていた。
「多分、あんたが今考えてるそれが……答えだろうな。当主のまとう衣は……それは、常に喪服……なのさ」

「……それは、なんでまた?」
返す言葉に困った王は、ただ聞き返すことだけをした。
「生き残る側でなけりゃ、いけねぇから……って、ことだったんじゃねぇか、ね」
いつもの通りにやりと笑う男に、けれど王は、どこか冷たい色を感じた。
それは……怒りだ。自分に向けられたものではないそれは、きっと誰かへの……いや、『何か』への、怒り。

「知ってるかい? 語部に二つある守護家当主の正装と戦闘装束は、語部で唯一……白い」
話の方向が少しばかり変わったことに、その内容に、王は男の抱く感情を、その理由を理解できた気がした。

「もう分かったと思うが……これは、死に装束なのさ」
王は、理解した。目の前の男の、その怒りの意味を。
それはきっと、自身が普段から抱いているそれと、同じ種類のものなのだ。

「当主は常に、黒い喪服。それは、常に送る側であれと、何者をも踏み越えて自身を守れという、教え」
「対して、守護家は常に、白い死に装束。それは、自身を持たず、いつでも死ねるただ一振りの剣であれという、教え」

男はそこで一度、口をつぐんだ。
噛み含むようだった口調は、いつの間にか、少しばかり早くなっていた。
男は自身でそのことに気付いたのだろう。

「組織に役割分担は、必要なものさ。…………だが、それは……」
そうして、もう一度口を閉ざす。

その先に続く言葉が、元より存在していないだろうことを、橙色の王は知っていた。




END. 2010 02 16(2010 08 20手直し)

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