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語部な日常制作中イラストや日記用イラスト、雑記雑感などを中心に展開中。まれに版権話や小説が出ることも。PAGE | 823 822 777 753 706 820 819 818 817 816 815 | ADMIN | WRITE 2010.08.20 Fri 19:52:32 ■■橙色の回想いつもお世話になっております琉綺様宅のユフィ陛下とうちの狂で、コラボ文章を書かせて頂きました。
……何と言うか……こう……そもそも出会いまで行かなかったというか……。 文章が久し振りだったからか……ほとんど、設定を説明するための文章になってしまったんですが。 色々詰めが甘いんだけども……もういいや。集中力が切れ、た。 閲覧は↓続きの折りたたみよりどうぞ。 ■あ。琉綺宅のスキットの、狂の丁寧語に大爆笑した次第なんですけども。なんぞあれ(大爆笑)。 ちょ、お前……何、良妻賢母っぽい感じのキャラクターを楽しげに演じてるんですか(爆笑)。 そして嫁強し。まさか、内助権限でにんじんを食卓から抹殺してるとは。 まるで夕陽のようだ、と、思った。
明るくて、温かかくて、深くて……ただ、眩しく…………そして、どこか切ない。 だから……… ■■ 橙色の回想 「あー、参ったぜ……」 執務室を出たら、そこは知らない土地でした。 限りなく冗談のような言葉だが、果てしなく事実だった。 先ほどまでいた語部の土地。しっとりと肌になじんだ四季をまとった空気から一転、目の前に広がるそこは、軽やかな色彩と明るい空気に覆われていた。 人の多いそこはどうも、この土地における大通りのようだった。 日光が降り注ぐ好天気の中、実に沢山の人がのんびりと、またはせわしなく行きかっている。 肌を刺す紫外線の強さが、嫌がおうにも異国の存在を意識させた。 それを視野に入れて、なんとなく状況を把握した青年は、一つ頭をかくと、とりあえず場所を移動した。 今彼が出てきた扉は、この土地へ繋がる媒介になっただけの存在だろう。 そのままその場所にいては、扉(察するに人家の玄関だろう)の持ち主に鉢合わせてしまうやもしれない。 するりと視線を走らせ、見た限り適度に人の少ない路地に身を滑らせた。 文化圏が違うのか、洋服を着る人々の中にたった一人和装で紛れ込んでしまったが、まあ、こういうのは本人が堂々としていれば、案外大丈夫なものである。 ……多分。 彼、狂(クルイ)は、語部でただ二人、「世界を行き来する術」を持っていた。 それは、軸の違う世界に渡る術、物語を渡る力である。 そして、この地は明らかに、彼の世界とは別の場所。 だが…… 「いい加減、オレで遊ぶのやめてくんねぇかねぇ。この、我儘な世界の意思(お嬢サン)は」 オレにだって一応、役割だとか仕事だとか書類だとか用事だとか、あとは散歩だとかおやつだとか衣装作りとか一人でチェスとか……色々々やることがあるんだぜ? と、青年は空に向かってぶつぶつと続ける。 ……後半は、予定というより願望だ。 そう、この「渡り」は、彼の意思によるものではなかった。 誰の意思でもなく、ただ唐突に、世界の摂理を超えて起こる事象。 天帝の御技とも違うだろうそれらを、狂は「世界の意思」と呼んでいた。 今回のコレも、きっとまた、そのお嬢サンの仕業なのだろう。 余談だが、彼が茶化して使っている「お嬢サン」という表現が存外外れていないことを、狂は知らない。 「はあ………言っててもしようがねぇか。しっかし、今回は一体何をご所望なのか、ねぇ」 もしかしたら、単に面白がってるだけかもしれねぇ。じっとりとした視線で空を見上げた。 誰とも知れない他人の道楽のためだけに、そう毎回死線をくぐってはいられない。 数瞬そうしていた狂は、しかし諦めたのかその作業を一段落させると、視線を地上に戻した。 再度視線を滑らせる。 差し迫った危険がないだろうことは、最初に確認した。 こう見えて、一応策士と他称されている。 だから今度は、周辺の言語に耳をすませた。 自動的に翻訳される(語部の特殊能力である)言葉を、意識して言語そのままの音で聞き取る。 「単語……該当なし………文法も……類似は……なし…………発音も引っかからねぇ」 そこまで言うと、音に集中するため閉じていた瞼をあげて、そして一つため息をついた。 「これは……ホントに参ったな。どこにも引っかからねぇ」 狂が今までに訪れ、知っている土地。 そこにあるどれとも、ここの言語は繋がらなかった。 単語も、文法の秩序も……ついでに言うなら通貨の単位も、今までに知ったどことも違う。 つまり……この地は、彼が今まで足を踏み入れたことのない「世界」である可能性が高い。 世界を渡るために必要なのは、現在地と目的地の「位置関係」だ。 語部が知る限り、世界の軸には絶対座標が存在しない。 ゆえに、術者は現在地を始点にして、目的地を補足することでその場所に移動する。 これは、普段世界を渡る分には特に気にすることもない事柄だった。 位置関係が分かれば飛べるのである。つまり、「行く」ことができれば「帰る」ことはできる。 ……このように、自分の意思以外で飛ばされた場合を除けば。 つまりこの場合、どうすればいいかと言えば。 1、語部で唯一、狂以外に世界を渡る術を持っている彼の息子が、気配を元に迎えに来るのを待つ。 2、この世界で、世界を渡る術を持ち、尚且つ狂の元いた世界を知っている者を探す。 この二つだった。 1は神頼みならぬ歪(ヒズミ)頼みにならざるを得ない見込みなので、とりあえず2を実行することにする。 そこまで思考して、狂はもう一度ため息をついた。 「……実行するたってなぁ。そんなヤツ……滅多にいねぇだろ」 はっきり言って、皆無に近い可能性だった。 今まで様々な世界を渡った狂だが、同じように世界を渡る術を持った存在に出会ったことは少ない。 世界を渡れるということは、それだけで、世界の決まりごとから半分くらいはみ出たような存在なのだ。 そうしょっちゅう存在するものでもない。 「とりあえず………何でもいいから情報でも収集するかねぇ」 こうなったら、もはや、なるようにしかならない。 戻れないなら、それが運命だと諦めるより他に術がないのだ。 このような場合の最大の問題は言語の壁だが、幸い語部は、それにだけはぶつかることがない。 「……自分で言うのもアレだが……何とも便利な能力だな」 他には、資金の問題などがあるが、幸い狂は、大道芸を得意としていた。 「……覚えといて損なことってぇのも……ねぇもんだなぁ」 せわしなく動く人の波をのんびりと観察しながら、暇なので一人ごちる。 息子に見つけて貰うならば、それまで暇だから話し相手が欲しいし、こちらで世界を渡れる者を見つけるにしても、情報源が欲しい。 どちらにしても、誰かちょっと大衆からはみ出したような者と出会いたい所だ。 高望むならば、この世界に関して多方向に知識が豊富で、なおかつ話が面白いヤツがいい。 「どっかにそんな丁度イイ感じのヤツが落ちてねぇかねぇ」 相変わらずのんびりと人波を観察しながら、そんな自身に都合のいい独り言を口にする。 と。 通りにテントを張って作られていた果物屋(市なのか、普段からある店なのかは判断しかねた)、その店の前に立つ青年に、ふと目がいった。 青年は、至極真面目な表情でリンゴとにらめっこをしている。 どこか浮世離れして整った横顔で、あれでもないこれでもないとリンゴを見繕う青年。 そのミスマッチが妙に微笑ましくて、狂はふと微笑んだ。 これだけの人波の中で彼に目がいったのは、その髪が至極綺麗な色彩を持っていたからだろう。 それはまるで、最高級の茶葉を、もっとも適した抽出方法で淹れた紅茶のような……深みのある赤色。 そのまま、何の気なしに見ていると、結局リンゴを買ったらしい青年が、唐突にこちらを向いた。 狂は、思わず目を見開いた。 一応、武術の心得のある狂である。気配は、違和感のない程度に薄くしているつもりだった。 にも関わらず、振り向いた青年は明確な意思を持って狂の方を見やった。 しばらくの間、狂のいる路地の周辺を彷徨っていた視線は、しかし数瞬の後には一点に定められた。 目があったその視線に、狂は一瞬、意識を奪われる。 それはただ一瞬、瞬きの瞬間のように短い瞬間の出来ごとだ。 人心を預かる身には、あってはならないことだろう。 支配する者は、けして他者に心を支配されてはならない。 けれど狂は、そんな事実以上に、青年の瞳に、そこに映った意思に目を奪われた。 綺麗にグラデーションの掛かった、橙色の瞳。 どこまでも澄んだそれは、覗きこめば底まで見えるようで、けれど、だからこそ、その底の深さを予見させた。 そう、だから。 思わず、近づいた。 まるで夕陽のようだ、と、思った。 明るくて、温かかくて、深くて……ただ、眩しく…………そして、どこか切ない。 だから、触れてみたくなった。 関わってみたく、なった。 それが、本当に存在するモノなのか。そして、その強さが真実であるのか。 ただ、確かめてみたくなった。 ……………そう。きっとそれが最初、だったのだ。 彼らが正しく彼らの立ち位置を把握するのは、これよりしばらく後のこと。 END. 2010 08 20 ■アトガキ 激しく妄想すぎた、狂とユフィさんの出会い話でした。 そう言えばいつの間にか友達だった彼らなので……どう出会ったのだろうと考えてみたら、こうなったと。 そして多分、この後もしばらくの間は、お互い相手の立ち位置(ユフィさんが国王で、狂が異邦人であること)は知らないままなんじゃないかと……妄想を。 狂はユフィさんが国王だとは知らないまま時々遊びに来て、ユフィさんは狂がそんな遠い所から来ているとは知らないままそれに付き合っていたら面白いなあと。 PR TrackbacksTRACKBACK URL : CommentsComment Form |