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語部な日常制作中イラストや日記用イラスト、雑記雑感などを中心に展開中。まれに版権話や小説が出ることも。PAGE | 684 683 682 681 680 679 678 677 675 674 673 | ADMIN | WRITE 2009.09.22 Tue 14:56:48 ■■雨琉綺宅で、あんまり素敵なコラボSSを頂いたので。つい書いてしまった、逆版。
うちの狂と、琉綺宅ユフィさんのコラボ。シリアスです。 ……真面目な文章なんて、久し振りすぎて……文体を忘れてました。 今までどうやって書いてたんだ私。好きな小説を読み返して勉強します。十二/国記万歳。 勢いで、せんりのネタ……使ってしまったらすみません。 解釈が違ったらアレだよなぁと思いつつ、ちょうどいい話を見つけてしまって。 琉綺>>考察……つい深くなっちゃいました(笑)。否定されなくてよかったです; 狂の口調は…………そうですね……私のフィーリングですからね。 ~さ、~だぜ、が多いかなぁ。あとは、意外にも、遠まわしな言い方が好みだとか。 けれど、私はむしろユフィさんの口調の方が難しいです……が(笑)。 しゃべり方が……意外に若いんですね。 毎回言い損なっていたのですが。ユフィさんの口調や行動が変だったらすみません; ↓続きより閲覧できます。 * * *
ぽつり、ぽつり、ぽつり…………ぽたり。 ぽつ、ぽつ、ぽつ、ぽつ、ぽたぽたぽたぽた。ぽた。 やがて、ざあざあと。雨が、降る。 ……雨は、嫌いだ。 「ああ、こりゃ……今日は外にゃあ出れねぇな」 向かいの長椅子に座る男は、窓を見つめると……そう言って、苦笑した。 その横顔に、言葉にはできない微妙な違和感を感じて、橙の王は目を瞬いた。 ■■ 雨 -トムラウ ハ カコ- 「ん? ああ、雨か…………結構……ひどいな」 男の言葉に、その視線を追って大窓を見やった青年は、つられたように呟いた。 彼の言葉通り、外は大いに荒れているようだった。 ――城下に被害は出ていないだろうか。 長引くようならば、何がしかの対策を考えなければ……。 と、しばし国主として、災害への対策内容とその優先順位を組み立てていた青年、国主――ユフィアシードは、ふと気付く。 目の前の男が、今日はやけに静かだった。 今日はやけに、などと言うと、一般的には失礼にあたるのかもしれないが……まあ、相手はこの男である。どうせ、そんなことは歯牙にもかけないだろう。 むしろ、「ひでぇなユッフィ!」などと言いながらカラカラと笑うに決まっている。 なにせ、「お前なんか嫌いだ。どこか行け」に、「い や だ」で答える男だ。 ……アホなんじゃないだろうか? 今一度思考の海(という名のボケとツッコミの海)に沈みかけていたユフィは、ひっそりと片眉をあげた。……スム-ズすぎて気味が悪かった。 この男と時間を共有していて、ここまで思考に邪魔が入らなかったことなど……指の数にも満たない。言うまでもなく片手の、だ。 「……くーさん?」 本格的に違和感を感じたユフィは、自身の前に横たわるテーブル越しに彼の男に呼び掛けた。 しかし。普段ならば、からかうような笑みで即座に答える男が、今日はその意識すらこちらに寄越さない。 不思議に思って顔を見やれば、彼は窓……多分にその先にある曇天を見つめていた。 ……いや。睨みつけていた。 その姿は、どこか遠く、まるで、雨を通して何か違うものを見るかのようで。 「……くーさん…………狂!」 思わず鋭くなった、通算で三度目の呼びかけに、長椅子に座ったまま窓を見つめていた狂が、びくりと肩を揺らした。そして、どこかぎこちなく首を回しこちらを見やる。 一瞬見えた鋭い視線は、まるで普段の『彼』とは違う人物と相対したかのような……鋭利で、冷ややかな……色。しかし、それは本当に一瞬のことだった。 ユフィの視線に気付いた狂は、それをすぐさま笑みに置き換えた。鋭い視線が、和らぐ。 「おう。一国の主が、でっかい声なんぞ出して。はしたねぇなぁ……どうしたんだい」 向けられた笑みに、温度のある声に、内心息をついたユフィは、ふっと笑い返す。 「はしたないって……お前がいう…………」 言いかけ、しばらく思案し。 「まあ、いいか。いや、やけに静かだったから……つい。考え事か?」 かけられた言葉に、狂はニヤリと唇を釣り上げた。 「そうさなぁ…………クッ、年寄りってぇのはいけねぇな。つい干渉に浸っちまうのさ」 オレも歳ってぇことかねぇ。ああ、寄る年波にゃあかなわねぇな! 『氷王』なんてぇ大層な二つ名を頂いていた頃のクールでドライなオレはいずこへ。 などと、どこまでが冗談なのか判断しかねることを口走っている男は、二十代に見えるユフィと、同じくらいの歳周りに見える。……見えはするが、彼は確かに長くを生きていた。 若く見えるが、実際には在位二十年を超える橙の国主の、さらに倍以上の時を生きる、男。 いつの間にやら、また窓に視線を戻していた狂に、その横顔に、ユフィは、外見をはるかに超える時を感じる。距離を感じるのは、こういうときだ。 この男は、恐ろしいほど簡単に他人の領域に入りこみ、けれど、こちらが立ち入ろうとした途端、恐ろしいほど素早く身を引く。 普段は感じない距離を感じるとき。その溝には必ず、彼の過去が横たわっていた。 今日も、そうだ。瞳が、過去を向いている。 「雨は、嫌いだ」 それは、雨音に消されそうな、小さな声。 ぽつりと、独り言のように漏れた言葉に、ユフィはそっと彼の顔をうかがった。 自身が呟いたことにすら気付いていない様子の男は、やはり窓をみていた。 ……その先に見える、過去を。 その横顔を何とはなしに見ていたユフィは、直後、瞠目した。 狂はふと。そう、ふと…………まるで、目の前の何かを嘲るかのような笑みを、はいた。 ――らしくない。 その笑みが何に対してなのか……誰に対してかなのかなど、付き合いの浅いユフィに分かるはずもない。彼と、この、見た目以上に長生きな男との関係は、それくらいに希薄なモノだ。 けれど……それでも、ユフィは思った。その顔は『お前』らしくない。 だが、こんなときにどうするべきか……それは橙の国主をもってしても分からなかった。 「どうした?」「大丈夫か?」そう問えばよかったのかも、しれない。 もしくは、「なんて顔をしてるんだ」と、笑い飛ばせば。 けれど、そのどちらをとったとしても……この男は、何事もなかったかのように答え、そして隠してしまうような気がした。そう。次は完璧に。ただ完璧に、隠し通す。 それは、癒えている訳ではない。消える訳でもない。 ただ、他者から『見えなく』するというだけのこと。 自身が他者の荷になることを恐れ、だからこそ、他者の心に掛かることをよしとしない。 この男は、そういうヤツだ。 分かりにくいが、恐ろしく器用で、けれどそれゆえに馬鹿じゃないかと思うくらい不器用な男。 だから。 今はただ、気付かないふりをする。 周囲に気を配ることが癖になっている男だ。ここにいるときくらいは、気を張らずに済めばいいと思う。 口を開かないことで……関知しないことで、護れるモノもあるはずだ、と。そう信じるから。 ああ。そうだ。 いつか、笑い話にしてしまおう。酒の肴に、語ればいい。 「お前って昔から馬鹿だなぁ」と、そう締めくくって笑える日が来れば、いい。 そうしていつか、お前も俺も、気負いなく笑いあえる日が来ることを。 ……今はただ、願って……祈っていよう。 救えるのは、俺じゃない。 だから。それまで俺は、ただ、見えないふりを……する。 END. 2009 09 22 狂のそれは、年長者の意地。 と、言うか……長男として、語部代表としての思考というか。 そして、ユフィさんはきっと、気付かないふりをしてくれる人だと思います。 PR TrackbacksTRACKBACK URL : CommentsComment Form |