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■■雨

琉綺宅で、あんまり素敵なコラボSSを頂いたので。つい書いてしまった、逆版。
うちの狂と、琉綺宅ユフィさんのコラボ。シリアスです。
……真面目な文章なんて、久し振りすぎて……文体を忘れてました。
今までどうやって書いてたんだ私。好きな小説を読み返して勉強します。十二/国記万歳。

勢いで、せんりのネタ……使ってしまったらすみません。
解釈が違ったらアレだよなぁと思いつつ、ちょうどいい話を見つけてしまって。

琉綺>>考察……つい深くなっちゃいました(笑)。否定されなくてよかったです;
狂の口調は…………そうですね……私のフィーリングですからね。
~さ、~だぜ、が多いかなぁ。あとは、意外にも、遠まわしな言い方が好みだとか。
けれど、私はむしろユフィさんの口調の方が難しいです……が(笑)。
しゃべり方が……意外に若いんですね。
毎回言い損なっていたのですが。ユフィさんの口調や行動が変だったらすみません;

↓続きより閲覧できます。
*     *     *

ぽつり、ぽつり、ぽつり…………ぽたり。
ぽつ、ぽつ、ぽつ、ぽつ、ぽたぽたぽたぽた。ぽた。

やがて、ざあざあと。雨が、降る。

……雨は、嫌いだ。

「ああ、こりゃ……今日は外にゃあ出れねぇな」
向かいの長椅子に座る男は、窓を見つめると……そう言って、苦笑した。

その横顔に、言葉にはできない微妙な違和感を感じて、橙の王は目を瞬いた。


■■ 雨 -トムラウ ハ カコ-


「ん? ああ、雨か…………結構……ひどいな」
男の言葉に、その視線を追って大窓を見やった青年は、つられたように呟いた。
彼の言葉通り、外は大いに荒れているようだった。

――城下に被害は出ていないだろうか。

長引くようならば、何がしかの対策を考えなければ……。
と、しばし国主として、災害への対策内容とその優先順位を組み立てていた青年、国主――ユフィアシードは、ふと気付く。
目の前の男が、今日はやけに静かだった。
今日はやけに、などと言うと、一般的には失礼にあたるのかもしれないが……まあ、相手はこの男である。どうせ、そんなことは歯牙にもかけないだろう。
むしろ、「ひでぇなユッフィ!」などと言いながらカラカラと笑うに決まっている。

なにせ、「お前なんか嫌いだ。どこか行け」に、「い や だ」で答える男だ。
……アホなんじゃないだろうか?

今一度思考の海(という名のボケとツッコミの海)に沈みかけていたユフィは、ひっそりと片眉をあげた。……スム-ズすぎて気味が悪かった。
この男と時間を共有していて、ここまで思考に邪魔が入らなかったことなど……指の数にも満たない。言うまでもなく片手の、だ。

「……くーさん?」
本格的に違和感を感じたユフィは、自身の前に横たわるテーブル越しに彼の男に呼び掛けた。

しかし。普段ならば、からかうような笑みで即座に答える男が、今日はその意識すらこちらに寄越さない。
不思議に思って顔を見やれば、彼は窓……多分にその先にある曇天を見つめていた。
……いや。睨みつけていた。
その姿は、どこか遠く、まるで、雨を通して何か違うものを見るかのようで。

「……くーさん…………狂!」
思わず鋭くなった、通算で三度目の呼びかけに、長椅子に座ったまま窓を見つめていた狂が、びくりと肩を揺らした。そして、どこかぎこちなく首を回しこちらを見やる。
一瞬見えた鋭い視線は、まるで普段の『彼』とは違う人物と相対したかのような……鋭利で、冷ややかな……色。しかし、それは本当に一瞬のことだった。
ユフィの視線に気付いた狂は、それをすぐさま笑みに置き換えた。鋭い視線が、和らぐ。

「おう。一国の主が、でっかい声なんぞ出して。はしたねぇなぁ……どうしたんだい」
向けられた笑みに、温度のある声に、内心息をついたユフィは、ふっと笑い返す。
「はしたないって……お前がいう…………」
言いかけ、しばらく思案し。
「まあ、いいか。いや、やけに静かだったから……つい。考え事か?」
かけられた言葉に、狂はニヤリと唇を釣り上げた。
「そうさなぁ…………クッ、年寄りってぇのはいけねぇな。つい干渉に浸っちまうのさ」
オレも歳ってぇことかねぇ。ああ、寄る年波にゃあかなわねぇな! 『氷王』なんてぇ大層な二つ名を頂いていた頃のクールでドライなオレはいずこへ。
などと、どこまでが冗談なのか判断しかねることを口走っている男は、二十代に見えるユフィと、同じくらいの歳周りに見える。……見えはするが、彼は確かに長くを生きていた。
若く見えるが、実際には在位二十年を超える橙の国主の、さらに倍以上の時を生きる、男。

いつの間にやら、また窓に視線を戻していた狂に、その横顔に、ユフィは、外見をはるかに超える時を感じる。距離を感じるのは、こういうときだ。
この男は、恐ろしいほど簡単に他人の領域に入りこみ、けれど、こちらが立ち入ろうとした途端、恐ろしいほど素早く身を引く。

普段は感じない距離を感じるとき。その溝には必ず、彼の過去が横たわっていた。
今日も、そうだ。瞳が、過去を向いている。

「雨は、嫌いだ」

それは、雨音に消されそうな、小さな声。
ぽつりと、独り言のように漏れた言葉に、ユフィはそっと彼の顔をうかがった。
自身が呟いたことにすら気付いていない様子の男は、やはり窓をみていた。
……その先に見える、過去を。

その横顔を何とはなしに見ていたユフィは、直後、瞠目した。
狂はふと。そう、ふと…………まるで、目の前の何かを嘲るかのような笑みを、はいた。

――らしくない。

その笑みが何に対してなのか……誰に対してかなのかなど、付き合いの浅いユフィに分かるはずもない。彼と、この、見た目以上に長生きな男との関係は、それくらいに希薄なモノだ。
けれど……それでも、ユフィは思った。その顔は『お前』らしくない。

だが、こんなときにどうするべきか……それは橙の国主をもってしても分からなかった。

「どうした?」「大丈夫か?」そう問えばよかったのかも、しれない。
もしくは、「なんて顔をしてるんだ」と、笑い飛ばせば。
けれど、そのどちらをとったとしても……この男は、何事もなかったかのように答え、そして隠してしまうような気がした。そう。次は完璧に。ただ完璧に、隠し通す。
それは、癒えている訳ではない。消える訳でもない。

ただ、他者から『見えなく』するというだけのこと。

自身が他者の荷になることを恐れ、だからこそ、他者の心に掛かることをよしとしない。
この男は、そういうヤツだ。
分かりにくいが、恐ろしく器用で、けれどそれゆえに馬鹿じゃないかと思うくらい不器用な男。

だから。

今はただ、気付かないふりをする。
周囲に気を配ることが癖になっている男だ。ここにいるときくらいは、気を張らずに済めばいいと思う。
口を開かないことで……関知しないことで、護れるモノもあるはずだ、と。そう信じるから。

ああ。そうだ。

いつか、笑い話にしてしまおう。酒の肴に、語ればいい。
「お前って昔から馬鹿だなぁ」と、そう締めくくって笑える日が来れば、いい。

そうしていつか、お前も俺も、気負いなく笑いあえる日が来ることを。
……今はただ、願って……祈っていよう。
救えるのは、俺じゃない。

だから。それまで俺は、ただ、見えないふりを……する。

END. 2009 09 22

狂のそれは、年長者の意地。
と、言うか……長男として、語部代表としての思考というか。
そして、ユフィさんはきっと、気付かないふりをしてくれる人だと思います。

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